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感動は国境を越えて -日本のエンタテインメントが挑むアジアという舞台-

株式会社MCIPホールディングス

PROLOGUE

日本のエンタテインメントはどれだけ世界に受け入れられるのか―。この高いハードルに真正面から挑むのがMCIPホールディングス(以下、MCIP)だ。すでにある商品を輸出するのとは少し違う。売り込むのは人であり、人が創り出した作品であり、売り込む先は人の心だ。Media Contents Incubation Platform。MCIPはその名のとおり、アジアの人々の心に響くエンタテインメントの土壌を育んでいる。吉本興業を中心に日本のエンタメ企業が集まり挑むこのプロジェクト。キーマンとなる3人に話を聞いた。

※旧小学校の校舎を利用した吉本興業東京本部(新宿区)にて
※掲載されている情報は取材時点(2018年4月)。敬称略


PROFILE

株式会社MCIPホールディングス 代表取締役社長
清水 英明Hideaki Shimizu

清水 英明

東京大学法学部卒業後、伊藤忠商事(株)に入社しアジアの情報通信関係業務に従事。上海、バンコク駐在。1997年赴任地バンコクで退社し、タイを中心に東南アジアを対象とする現地メディア会社に勤務。2000年(株)スペースシャワーネットワーク入社。2011年同社代表取締役社長就任。2017年同社代表取締役会長就任、(株)MCIPホールディングス取締役副社長就任。2018年4月から現職。

吉本興業株式会社 海外戦略本部担当
横手 志都子 Shizuko Yokote

横手 志都子

スポーツマーケティング会社を経て、2009年8月(株)よしもとクリエティブエージェンシー入社。2013年7月経営企画室長就任。官民合弁のエンタテインメントをアジアで展開する会社設立に向け尽力。2014年6月(株)MCIPホールディングス設立、代表取締役社長就任。2018年4月から吉本興業株式会社で海外戦略本部担当。

Yoshimoto Entertainment Thailand
ウイム・マノーピモーク Wim Manopimok

ウイム・マノーピモーク

バンコク生まれ。4歳のとき父の起業をきっかけに渡日。14歳でタイに戻り、国費留学生として早稲田大学修士課程を卒業、日本の大手企業へ就職。2000年にタイに戻り、数々の日系企業との現地ビジネス立ち上げに関わり、2013年よしもとエンタテイメント(タイランド)CEOに就任。

chapter1 日本から持っていくだけではない、現地に根付いたエンタメの創造
MCIPが展開する事業は幅広い。展開国はタイ、インドネシア、中国、台湾、韓国、ベトナム、マレーシア、フィリピンといったアジアの国々。各国に芸人を住まわせて人気をゼロから掘り起こす「住みますアジア芸人」、現地テレビ局と組んだ番組制作や、現地若者たちで結成したアイドルのプロデュース……。最近では台湾の日本コンテンツ発信拠点「華山Laugh&Peace Factory」が話題だ。事業のターゲットは全て現地の人々。言語も文化も違う人々の心をどのように掴むのか。
横手
現地に根付いた形にするのが非常に大事だと実感しています。確かにアジアには日本や日本のポップカルチャーを好きな人は沢山いて、日本で人気の芸人を連れて行ければ喜んでくれる。でも、それは実はニッチな世界で、本当に根付くというのは、そうではない人も含めた一般大衆をターゲットにすること。日本のものをそのまま持っていくだけでは到底うまくいきません。現地の目線で、現地でコンテンツを生み出さなければいけないと強く感じます。
ウイム
タイ人がどれだけ日本を好きかというと、そうでもない人は沢山います。それは年代によっても、環境によっても全然違います。一方で、仮面ライダーやウルトラマンなどのアニメや日本食など、誰もが知っている強いコンテンツがある。各国の人々が興味を持つものをどうローカライズしてマーケットを掘り起こすかが大事です。
横手
どのコンテンツが現地で人気になるかならないかは、やってみて初めて分かるところがあります。それは事前にリサーチしても分からない。その意味で、台湾の「華山Laugh&Peace Factory」のように365日、常にコンテンツを発信できる場を作ったというのは大きいですね。場があることで、そこでコンテンツが育つ、人気者が生まれる、というのはあると思いますので、それを海外でもやっていきたいと考えています。
清水
MCIPの中核を為す吉本興業はイベントや劇場を作ったり、映画祭を開催したりと、国内では強力なネットワークを武器に発信の場を作っています。同じことをアジアでできるようにするのはとても大事。そのためには、良いパートナーを見つけるなど、現地のマーケットへの入り方が肝心です。昨年、MCIPがタイで音楽イベントを催したときも、現地の著名音楽プロデューサーなどをチームに取り込んでいきました。彼らの先には現地でのネットワークがあります。今後、コンテンツ制作を広げていく上でも、色々な機能での現地ネットワークの構築と活用が重要だと思っています。
横手
現地の誰と一緒にやるかというのは本当に大事ですね。例えばタイのマーケットを分析するよりも、タイ人であり、かつ日本のこともよく知っているウイムが現地にいるということが強みになる。そういうパートナーをどれだけ各国で見つけられるかはこのプロジェクトの鍵になってくると思います。
Discover japan paris

上)現地テレビ番組に出演する“住みますアジア芸人”

下)音楽ライブツアー“列伝”初のアジア公演「SPACE SHOWER RETSUDEN ASIA
  TOUR 2017 powered by MCIP」

台湾の「華山Laugh&Peace Factory」


chapter2 新しいエンタメの役割とビジネスモデルを、業界全体で追求すること
MCIPは2014年、吉本興業を含む民間7社とクールジャパン機構によって立ち上げられ、翌年には音楽専門チャンネルやイベントを企画運営するスペースシャワーネットワークも加わった。単体ではなく、業界の企業が集まって海外を目指すことに意義がある、と三人は語る。そこには日本のエンタテインメント業界が抱える課題を捉え、その秘めた可能性を信じる心が垣間見られる。
清水
私は長くアジアに駐在してきましたが、人々の生活にデジタルの要素が加わり「ソフト」の役割もだいぶ変わってきた中で、エンタテインメントにはもっとできることがあるという想いがあります。本来、エンタテインメントには人に感動を与え、物事を楽しく分かりやすく伝える力がある。もっと教育、スポーツ、観光など様々な産業と組みながら、どうお金を回収するかというビジネスモデルも含め、この業界の可能性を広げなくてはなりません。
横手
ビジネスモデルという意味では、日本の良さという付加価値を生み出すためのコストが高く、それを現地で回収するに至らない時に難しさを感じます。例えば、現地のアイドルグループは日本からプロデューサーや振付師を派遣し日本流で育てるのでお金がかかります。ビジネスとして成り立たせるには、単にクールジャパンをコストをかけて押しつけるというだけではダメで、現地の人が何に感動して、何に心を打たれるのかを本質的に掴んでいかないといけません。
ウイム
このプロジェクトは長い目で見て新しいマーケットを作っているのでしょう。今蒔いた種が次の世代でビジネスになって実を取れればいい。一晩で有名人になれることは絶対になく、やり続けないといけない。そのためには、私たちの資産であるアイドルやアーティスト、芸人たちのモチベーションを高めなくてはいけません。しかし彼らも人で、感情があり好き嫌いもある。彼らにどのようなストーリーを作り、どうモチベーションを高めてあげられるかということに一番苦労しますね。
清水
今の日本の若い世代のアーティストは、インターネットの影響でアジアが近く、SNSで各国のファンやアーティストと既に繋がっている。だからアジアに出たい、アジアの作り手と交流したいという声がとても強い。このプロジェクトもそんな声に背中を押されています。また日本はマーケットが大きくシステムも出来上がっている一方、エンタテインメントの捉え方や構造が古いと感じることがあり、ビジネスモデルでも、コンテンツ制作でも、もっとアジアに積極的に関わっていかないと刺激が乏しく、どんどん古くなっていくという不安は大きいですね。
横手
だからこそ業界の企業が集まったMCIPが業界で先駆けてアジアに行き、現地に根差して人脈を得てベースを作ることが大事なのだと思います。

chapter3 アジアのマーケットを「面」で見られるプラットフォームに
2018年はアジアの複数箇所にライブハウスや劇場など、新たなコンテンツ発信の場を作っていくと言う。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、世界の人々がますます日本に注目していく中、取組を更に加速しながら、日本のエンタテインメントの新しい挑戦が続く。その先陣を行く三人にこのプロジェクトを通して実現したい夢を語ってもらった。
ウイム
私たちがタイで成功できたことをベトナムやミャンマーなどに伝えて、その国でローカライズして広げていければいいなと思います。そうしてエンタテインメントで日本とアジアの国々をつなげていくプラットフォームを作っていきたいですね。どれくらい時間がかかるか分かりませんが、次の世代へのバトンをお渡しできればいいなと思います。
横手
MCIPは各国で成功することに加えて、アジアのマーケットを「面」で見られるようなプラットフォームになることがとても大事だと思います。その意味で、アジア全体をよくご存知で、アジア各地の複数の言語にも親しまれていて、経営者としての長期的な視点と感度を備えていらっしゃる清水さんの参画はMCIPのブレイクスルーかもしれません!エンタテインメント業界は、いわゆる「業界」という内向なイメージを持たれがち。日本でのこれまでのやり方ではない、新しいビジネスを切り拓いていくことが、MCIPの重要なミッションだと思っています。
清水
教育の観点から、人が受けた刺激がどう他の人につながっていくかに関心があります。このプロジェクトを通して夢や希望を与えることができた子どもたちが、大人になってクリエイターになったり、他の人に夢を与えられる人になったりすれば嬉しいですね。あとは、このプロジェクトは複数の国で行っていることが特徴なので、今後は国同士の横連携をもった新しいフェーズに進めば、国や地域関係を良い方向に変えるきっかけを作ることができるかもしれません。MCIPがそのハブになっていけたらいいなと思います。

※「MCIPホールディングス」ホームページはこちら

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