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日本アニメの価値を最大化するために

株式会社アニメコンソーシアムジャパン

PROLOGUE

多くの日本人が子供の頃からテレビ画面で慣れ親しんだアニメは、「ネット配信」という時代が産んだ新たなツールを携え、その歴史に転換期を迎えている。今や日本のアニメに国境はなく、世界の人々が同時に自国の言語で楽しめるものへと変貌を遂げた。それを推進するアニメコンソーシアムジャパン(ACJ)は2014年11月に発足。クールジャパン機構からの10億円の出資に加え、アニメ制作・出版・広告などの業界から国内屈指の主要プレイヤーが参画し、文字通りのオールジャパンで取り組んでいる。日本のアニメ産業に新たなビジネスモデルが生まれた今、そこに秘められた可能性とは何か。

(※掲載されている情報は取材時点(2015年12月)。敬称略。)


PROFILE

株式会社アニメコンソーシアムジャパン
代表取締役社長
鵜之澤 伸Shin Unozawa

鵜之澤 伸

1957年生まれ。1981年株式会社バンダイ入社。プラモデルの営業担当を経てアニメのビデオソフトを手掛ける新規事業部署に異動。「機動警察パトレイバー」などでOVA(オリジナルビデオアニメ)のビジネスモデルを確立しアニメ市場の拡大に寄与する。以降、ビデオゲーム事業部門在籍中に日本のアニメコンテンツの海外での人気を目の当たりにし、海外市場での可能性を見いだす。2014年11月、株式会社アニメコンソーシアムジャパンを設立。代表取締役社長に就任。

株式会社アニメコンソーシアムジャパン
営業・広告部門
久保 理利子Ririko Kubo

久保 理利子

1990年生まれ。2013年株式会社アサツー ディ・ケイ入社。旅行業界や化粧品業界を担当し、ユーザーターゲットを絞った営業やプロモーションを担当する。2015年5月に株式会社アニメコンソーシアムジャパンに出向し、営業広告部門で主に海外のアニメイベントの出展企画・運営を担当。2015年度は10カ国以上のイベントに赴き、日々世界のアニメファンとダイレクトな交流をはかりながら文化や流行、商習慣から見る各国の嗜好やマーケティングを調査し、運営サイト「DAISUKI.net」に反映している。

株式会社アニメコンソーシアムジャパン
配信・ライツ部門
野村 心之介Shinnosuke Nomura

野村 心之介

1980年生まれ。14歳から18歳までをイギリスで過ごす。日本で大学を卒業後、アニメコンテンツの海外展開に可能性を感じ、バンダイビジュアル株式会社に入社。営業を一年経験後、経営企画部へ。その後株式会社バンダイナムコホールディングス、株式会社ランティスなどで経営企画を担当し、複数のグループ会社の設立を経験。2015年4月より株式会社アニメコンソーシアムジャパンへ参加。

chapter1 日本アニメの海外ビジネスに手応えを感じた300万本のヒット
ACJは日本の正規版アニメをインターネット配信するサイト「DAISUKI.net」を通じ、220以上の国と地域の人々にサービスを提供している。対応言語数は作品によって異なるが、15言語以上に対応している作品もある。ポイントは過去の作品に加え、最新作を日本国内での放映と同じタイミングで公開するサイマル配信を実現していること。しかも視聴は基本的に無料で、関連グッズの物販や広告で収益を得るビジネスモデルだ。日本から発信された最新の正規版アニメが見られることが世界のアニメファンの心を掴み、会員数を順調に伸ばし続けている。
鵜之澤
81年にバンダイに入社して、プラモデルの営業を経てから12年間、テレビでは放映しないオリジナルのアニメを制作し、ビデオソフトとして販売する新規事業を担当しました。その後、ゲームの世界へと転じましたが、ゲーム機の高性能化に伴って高騰したゲームの開発費の採算を取るために、外国人にも人気の「ドラゴンボールZ」のゲームを海外で販売したんです。蓋を開けてみれば米国・欧州で300万本の大ヒット。日本のアニメの海外での威力と、アニメとゲームの連動に秘められた可能性を身を持って実感した経験でしたね。
野村
日本のアニメは国の色がないですよね。金髪に進化する悟空はもはや地球人でもありません(笑)魔法が使えるといったファンタジー色の強いものも多い。それが受け入れられやすい理由の一つではないでしょうか。
鵜之澤
確かにキャラクターが抽象化されているというのは海外で愛されるポイントかもしれませんね。ただ、日本のアニメは最初から海外でも売れることを狙って作られてはいません。2000年代最初のDVDバブルが弾けた頃から、少しずつ日本のアニメが海外で買われなくなってきて、そのうちインターネットが勃興すると、ファンが独自に字幕をつけて無許可でネットに配信する「海賊版」と呼ばれる違法サイトで楽しむようになりました。
野村
違法サイトに対抗するためには、それより良いサービスを提供しなくては勝てません。例えば、単にアニメに字幕を付けて多言語化するのではなく、関連情報もあわせて多言語で発信します。「DAISUKI.net」に行けば、違法サイトにいく必要性がないという状況をつくるんです。あとは、一つの国・地域に一定数の会員が集まれば、それが一つの市場となり、フィギュアやゲームなど、周辺産業の商品が売れるようになります。
鵜之澤
配信しているアニメの関連商品の広告を頂き、物販につなげるのが日本のキャラクター・マーチャンダイジング(注1)の基本です。アニメ産業は作品のライセンスの売上とその周辺事業の売上の両方で成り立っていて、私たちはそれをエコシステムと呼んでいます。どこかだけ部分的にやってもだめで、グローバルに総合的にそのシステムを構築することがACJの使命と思っています。
久保
様々な国で「DAISUKI.net」をプロモーションしていますが、忘れてはいけないのは日本のアニメ産業を守るという使命。単に「会員数が増えれば良い」「アニメが売れれば良い」ということではありません。そこにオールジャパンでやっている意義があり、だからこそ日本アニメの価値を最大化できるのだと思っています。

注1)アニメキャラクターの関連商品を適切な数量・価格・タイミング等で市場に提供するための企業活動。

「アニメエキスポ2015」(2015年7月、米ロサンゼルス)で設置した大看板

「アニメエキスポ2015」(2015年7月、米ロサンゼルス)で設置した大看板

「アニメエキスポ2015」のACJブース

「アニメエキスポ2015」のACJブース

「DAISUKI.net」のFacebookページ

「DAISUKI.net」のFacebookページ


chapter2 世界のアニメファンとダイレクトにつながる
アニメの「ネット配信」が持つ可能性は無限大だ。まず、ユーザーの作品に対する素直な反応がすぐに分かる。ヒットすればあっという間に視聴回数が増え、国・地域ごとに分析すれば関連商品のマーケティング・データになる。また、ネットを通じて世界中のユーザーからの声がリアルタイムで届き、次のアニメを配信する際の参考にできる。一方、同様の映像の配信会社は世界中で存在感を強め、市場で競争を激化させている。こうした中で、「DAISUKI.net」はどのようにオリジナリティを発揮していくのか。

「DAISUKI.net」公式サイト(写真は米国で大ヒット中の“ONE-PUNCH MAN”(ワンパンマン))

鵜之澤
10月に配信開始した「ONE-PUNCH MAN」が米国で驚異的にヒットしています。4月からの「聖闘士星矢 soul of gold」も南米で大ヒットするなど、多言語で配信することで、私たちが予想もしていなかった反応が出ることがあります。それをリアルタイムに把握できるのがこのビジネスの面白いところですね。
久保
私たちは公式のFacebookページを開設して英語で発信していますが、「なぜ私の国でこの作品はやらないのか」とか、「この作品を配信してくれてありがとう」などのメッセージが世界中からダイレクトに届き、その反応を見ながら対応言語数を増やしたりもします。
鵜之澤
ユーザーの視点で考えれば、これからの鍵となるのはスマホでしょう。今は、アニメの視聴も、ゲームも、買い物も、スマホでできる時代。私たちが配信するアニメは基本的に無料としながらも、それと連動したスマホゲームや買い物を楽しんでもらう、つまりフリーとプレミアムが組み合わさったフリーミアムが、コンテンツの価値を最大化する新しい概念と思います。
野村
今はまだ配信会社やゲーム会社、玩具メーカーなどがそれぞれ海外に進出しています。そうした中でも全体を見ながら各関連企業の強みを組み合わせることもACJの役目だと思います。
鵜之澤
これだけ可能性を秘めたビジネスですが、正直言って今は“配信バブル”。日本のアニメに対する評価が高く、外資系の様々な配信会社の買い付け価格が高騰しています。この状況自体はアニメ業界にとっては良いことで、正規版が海外の人に届き制作側にきちんとお金が入ることは、私たちの本来の目的でもあります。
野村
一方で、日本の産業が外資系の資金で成り立つことは、長期的に見るとその産業の縮小や衰退にも繋がるリスクがあります。日本のアニメ産業を繁栄させながら海外へ提供していく。それが、私たち自身がアニメ配信のプラットフォームを持つことの意義だと思います。
鵜之澤
私たちができることは彼らと競合するのではなく、「日本発の日本の正規版アニメと言えば『DAISUKI.net』」という地位を確立し、課金しなくても見られるサービスを続けることでしょう。あとは、デジタル技術の流れは5年くらいのサイクルで変わるので、少なくとも次の波のときは最先端でサービス提供ができるような技術を持つことではないでしょうか。
海外のイベントに集まった『DAISUKI.net』のファンたち

海外のイベントに集まった『DAISUKI.net』のファンたち

海外のイベントに集まった『DAISUKI.net』のファンたち

chapter3 若い人たちにチャンスを、そしてアニメ産業に夢を
デジタル技術の革新が繰り返される中、ハードの進化とともに、アニメとゲームの連動が高まっている。もはやアニメに「輸出」という概念はなく、世界の人々が同時に楽しめるグローバル規模の巨大なサービス産業に成長している。こうしためまぐるしい環境の変化を、その最前線にいるメンバーたちは楽しんでいるように見える。最後に、ACJでどのようなことを実現したいかを聞いた。
久保
私は元々アニメを一切見なかったんです。一切縁がないと思っていたほどです。私と同じようにアニメは特定の人のものだと思っている人もまだ多いと思います。今アニメの仕事をしている自分にもびっくりしていますが、世界中にアニメをカッコいいと言わせる仕事がしたいと思っています。
野村
ACJを、日本のアニメを海外に広めるための礎となる会社にしたいと思っています。一企業が個別にやってできることではありません。でも、このままでは産業がどんどん縮小されるのは分かっている。日本のアニメの価値を最大化するための鍵となる仕事ができれば良いなと思います。
鵜之澤
日本のアニメは世界でとても支持されています。ビジネスがうまく行けば、クリエイターがどんどん育つ。若い人たちにもチャンスが出てきて、アニメが夢を持てる産業になる。ネット配信によって、そのチャンスが出ているという手応えがあります。私のように旧来からのアニメ業界を知っている人間と若い人たちのアイデアで、何か革新的なことができるのではないかと思っています。
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