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日本と世界を近づける「コンテンツの力」を信じて

WAKUWAKU JAPAN株式会社

PROLOGUE

アニメ、ドラマ、スポーツ、音楽、映画、旅、グルメ・・・。日本で日々放送されているあらゆるジャンルのテレビ番組を、海外の人も現地語で24時間365日楽しめる-。スカパーJSATにより始まった「WAKUWAKU JAPAN」は、それを実現するこれまでにない有料放送のチャンネルだ。2015年3月、クールジャパン機構はこの事業に44億円の出資を決定した。現在、インドネシア、ミャンマー、シンガポールで約320万世帯に視聴されている。現地の人はどう受け止め、この事業にはどんな意義があるのか。同チャンネルを中心とした事業に特化した新会社「WAKUWAKU JAPAN株式会社」の社長とメンバーたちを取材した。

(※掲載されている情報は取材時点(2015年7月)。敬称略。)


chapter1 日本を知りたくても日本コンテンツが少ないという現実
日本コンテンツの海外進出のために何かできないか-。「WAKUWAKU JAPAN」の開局はそんな想いから立ち上がったプロジェクトだ。最初の開局場所として選んだのはインドネシア。現地リサーチの結果、日本に対して親しみを持つ人が多い一方で、日本コンテンツの流通がほぼ皆無に等しいという実態が明らかになった。いざ開局してみると想定以上の反応があったが、継続的に現地のニーズを汲み取る努力が欠かせないという。
牧野
立ち上げの時から関わってきましたが、インドネシアでは「日本コンテンツを見たい、でも無いので見られない」という声が非常に多かった。定常的に日本のテレビ番組を流し続けるチャンネルを作れば大きなビジネスチャンスになると感じましたね。
川西
海外での放送に必須となる現地プラットフォーム(注1)との交渉は非常にハードなもの。インドネシアの場合、最初に現地最大の「Indovision」での放送に成功してから徐々に認知度が上がり、他のプラットフォーム視聴者から「うちも“WAKUWAKU”を見たい」という問い合わせがどんどん増えて、一気に7プラットフォームまで広がりました。
九里
大々的にプロモーションした効果も大きいと思います。地上波での大々的なスポットキャンペーン、音楽イベント、ウルトラマンショー、AKB48とJKT48(注2)の合同コンサート、ガンバ大阪と現地チームとの親善試合、「WAKUWAKU Café」の運営と、多彩で波状的なプロモーションを行いました。「WAKUWAKU Café」には12万人以上の来客がありました。
牧野
プロモーションも番組編成も何が響くのか、やってみなくては分からない。現地の視聴者からは僕たちが想定もしなかった反応があったりします。
九里
例えばインドネシア人はホラーが大好きなので日曜夜にホラー映画を放送していたところ、「一部の地域でお化けは金曜夜に出るという宗教上の定説がある」という情報を視聴者からいただきました。今では金曜夜の「J HORROR(ジェイホラー)」はとても人気の枠です。今年は日本のお化け屋敷を使ったイベントも実施し大盛況でした。
牧野
番組編成は現地のニーズに合わせて常に変えています。当初は誰も見ないと言われていたJリーグ中継も今や人気番組の一つです。また日本のカルチャー、旅、グルメに関わる番組がアニメやドラマよりも視聴率が高かったことも驚きでした。
川西
2020年に向けて日本が注目される中、テレビを見ながら「ここに行こう」と決めることが増えるでしょう。我々のミッションの一つは日本の地域を紹介していくこと。「四季折々」という日本各地の魅力を伝えるオリジナル番組も放送してきました。例えばインドネシアの方々が日本に来るのは桜の時期ばかりなのですが、番組を通して紅葉の美しさも知っていただき、秋にも日本各地を訪れてくれるようになるといいですね。

注1)有料放送管理事業者
注2)ジャカルタを中心に活動しているインドネシアの女性アイドルグループ。
AKB48の姉妹グループ

AKB48とJKT48の合同コンサート (C)AKS/(C)JKT48 Project

AKB48とJKT48の合同コンサート
(C)AKS/(C)JKT48 Project

インドネシアで行列ができた「WAKUWAKU Café」

インドネシアで行列ができた
  「WAKUWAKU Café」
  (c)WAKUWAKU JAPAN

ガンバ大阪とインドネシア現地チームとの親善試合

ガンバ大阪とインドネシア現地チームとの親善試合
  (c)WAKUWAKU JAPAN


chapter2 長年の課題を乗り越えて動き出した歯車
「WAKUWAKU JAPAN」では、日本で放送中の人気ドラマをたった一ヵ月のタイムラグで放送している。できるだけ“旬”な番組を放送することは「日本の今」を海外に伝えるためには必要なこと。しかし権利元との交渉や現地語の字幕・吹替などにかかる時間を考えればそれは容易ではない。その意味でも、この事業は日本のコンテンツ業界が長年抱えてきた大きな課題への挑戦と言える。
九里
例えば韓国のドラマや音楽の新作はほぼリアルタイムでアジアの他の国でも楽しめますが、それは最新の韓国コンテンツを速やかに権利処理できる仕組みが整備されているからです。一方、日本コンテンツはポロポロと出ていて、しかも何年も前のものが多い。韓国は最新のトレンドを紹介できるのに日本は古い。その状況を変えるために設定しているのが「Drama NEO(ドラマネオ)」という新作ドラマの枠です。
牧野
コンテンツを海外に出すまでに時間がかかれば、その間に海賊版が作られるという問題もある。他のチャンネルと対等に勝負するためには、新作をできるだけ早く出すというのがとても重要なのです。
川西
NHKも民放も積極的に協力してくれています。クールジャパン機構の出資も追い風となってオールジャパンの動きが出てきました。放映権の商談においては海外でOTT(注3)を行うための権利など、まだまだクリアーしていかなければならない課題はありますが何とか乗り越えていきたいと思います。
九里
少しずつこの事業への理解者が増えて行く中で、スポンサーという点でも引き合いが増えています。日本政府観光局(JNTO)が現地でとったアンケートによると、訪日旅行を考えたきっかけを「テレビ」と答える人が最も多く、さらによく見る旅行番組に「WAKUWAKU JAPAN」を挙げた人が、地上派で放映される人気番組と同等かそれ以上のスコアを獲得しているんです。 今や自治体や地域の観光推進機構などからも現地にPRできる企画を一緒に考えたいというお話をいただいています。
川西
インバウンドに関わるような日系の旅行会社、テーマパーク、ホテル、交通機関などとタイアップした番組が人気で、そこで紹介された旅行商品などの販売も順調なようです。課題はいかに現地の企業にスポンサーになっていただくかですね。これに物販事業が絡んでくるとより大きな効果が生まれてきます。
牧野
昨年「WAKUWAKU JAPAN」で放送したウルトラマンシリーズのTシャツを、クールジャパン機構が出資しているTokyo Otaku Modeのeコマースを通じて販売したところ完売しました。決して安くはない価格設定であったにも関わらず、です。同じようにファッションや音楽に関連する物販事業も計画しています。

(注3)Over The Topの略。ビデオオンデマンドやテレビに加え
 タブレット・スマートフォンでのマルチスクリーン放送など
 インターネット上で提供される動画・音声サービスを指す

「四季折々」で日本を訪れた現地レポーターたち

「WAKUWAKU REPORTER2015」で日本を訪れた現地レポーターたち
(c)WAKUWAKU JAPAN

「四季折々」で日本を訪れた現地レポーターたち

chapter3 この事業が持つ社会的意義をモチベーションに
目標は2020年度までに世界22ヵ国への展開。今年7月には3ヵ国目となるシンガポールが開局した。現地リサーチによると、同国では欧米や韓国コンテンツの流通が圧倒的に多く、日本コンテンツに対する関心がインドネシアほど高くないという。しかしそれは日本コンテンツに魅力がないからではなく、そもそも流通する絶対量が少なく認知されてこなかったためで、潜在的に眠っているニーズを掘り起こせばビジネスチャンスは大きいはずだとメンバーは話す。最後にこの事業に懸ける想いを語ってもらった。
牧野
この事業を何のためにやるのかという社会的意義から考えれば、日本と世界が仲良くなるきっかけになればいいなと思います。少なくとも韓流ブームのときは日韓の関係は間違いなく良かった。それこそ“コンテンツの力”です。
九里
僕は根っからのテレビっ子なので「こんなに楽しい番組を作る日本って良い国でしょ」と世界に伝えたい。人は「楽しい」「面白い」と感じている中で入ってきた情報は受け入れやすいですよね。あとは営業として常に編成のことを考え、また編成にも常に営業のことを考えてもらい、その両輪で描く円を少しずつ大きくしていきたい。そして、「WAKUWAKU JAPAN」でやって良かったと思ってくださるクライアントさんを増やしていきたいです。
川西
何より一人でも多くの世界の人に日本の番組を楽しんでもらいたい。そしてそれによって得られた収益を日本のコンテンツ業界に還元し、より良い番組制作につなげるという好循環を作りたい。さらに、クールジャパンやビジット・ジャパンの推進にも寄与したい。ちょっと欲張りかもしれませんが、今は「日本のために!」という使命感に燃えています。
ロゴ

PROFILE

代表取締役社長
川西 将文Masafumi Kawanishi

川西 将文

1980年伊藤忠商事株式会社入社。1996年日本デジタル放送サービス株式会社(現スカパーJSAT株式会社)、セールスプロモーション部長、営業本部副本部長、執行役員を経て、2005年執行役員常務。2015年5月より現職。

編成・放送運行部長 兼 編成・制作チーム長
牧野 誠Makoto Makino

牧野 誠

1994年株式会社TVC(テレビ製作関連会社)入社。退職後フリーディレクターを経て、2008年株式会社スカイーパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT株式会社)入社。有料チャンネル事業部門 事業開発部 アジア事業チーム長、海外事業部 部長代行等を経て、2015年7月より現職に出向。

マーケティング部 部長代行 兼 広告営業チーム長
九里 昌宏Masahiro Kunori

九里 昌宏

1995年株式会社電通入社。テレビ局で番組セールス等を担当後、営業局で製薬会社グループ等を担当。2014年6月電通退職後、コンサルティングファームでの勤務を経て、2015年3月スカパーJSAT株式会社 海外事業部勤務、7月より現職。

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