1. TOP >
  2. ニュース >
  3. コラム「私のクールジャパン」

コラム「私のクールジャパン」

ファッションディレクター/ジャーナリスト/ブロガー ミーシャ・ジャネット

日本でサブカルが生まれる理由は?「ファッション治安の良い王国」だから

ファッションディレクター/ジャーナリスト/ブロガーミーシャ・ジャネット

東京のカラフルでユニークなファッションの特色はなにかと聞かれたら、私はこう答える。「世界で最もファッション治安の良い都市です」と。「ファッション治安」とは何か?少し詳しく説明しましょう。
大きな理由は、サブカルファッションの成功。初めてニューヨークファッションウィークに参加した時の話。不安と期待が入り交じったあの感情は、みんなとなんら変わりなく新鮮なもの。ちょうどその時、レディガガがポップミュージックシーンにトロイの木馬のごとく現れた。ファッションで自分を表現する彼女の姿にとても親近感を覚えた。

私もその「奇抜派」の一人で、波にのっていました。クシノマサヤのオブジェのようなシューズを履き、ソマルタの巨大深紅のニットドレスにノブキヒズメのアーティスティックなフェザーのハットを身に付けていた。その頃、NYCの服飾系学校 FIT (Fashion Insitute of Technology) の、”現在の東京ストリートサブカルチャー”についてのエキシビションを最終目的地として東京のブランドを着て行ったのだ。そのクリエイティブなコーディネートに何百万もの重みを感じ、2ブロック程歩こうとしたけど、様々なトラブルに遭いました。

“Hey お姉さん、ハロウィンパーティでもやってんの?”
“クレオパトラかよ”
“ガガかと思った”

私が歩いているのを見かけたタクシーは速度を落としてチラ見した。なんだか動物園の動物になった気分で、残りの一週間は注目を集めすぎないように控えめファッションにした。

何週間か後に、東京ファッションウィークで似たような「個性派」ものを着た。しかもその格好で電車にも乗った(高い帽子だとタクシーにも収まらなかったので)。ジロジロ見られるんだろうなと思った。だって、目がいってしまうような服を着ていたし、ニューヨークの時を思い出しディフェンスのスタンスを決めようとした。やっぱり人間誰しも我慢出来ないこともある...
「ガガだ!と言われたら、ジョークでサインを描いてあげようか」半笑いで決めた。

だけどそれは、まったく問題無かった。私に”コスチューム”についての質問をしたり、私はいったい何者で、どうしてこうするのか、これからどこへ向かうのか、そういう疑問の視線や偏見の目の心配はいらなかった。

この街は、ファッション治安が良い。しかし、"サブカルチャー成功"が充実していない国はファッションの治安が悪いと思う。”ファッション治安度”。良い意味で、日本は風変わりな人をそっとしておくことは文化なのだ。海外では、何にでも対して、「なぜ?」ときくのが主流。そして、注目を奪おうと、声を出したり、触ってきたり、時には喧嘩してくる者もいる。

東京にはなぜこんなにも素晴らしく、ユニークなサブカルチャーが存在しているのかというと、コミュニティをつくった原宿や渋谷のおかげと言える。ネオギャルと同じように白塗りアーティストだって安心して電車に乗れる。こうした風潮から、ギャル、森ガール、ロリータ、ゴス、フェアリーなど数多くのサブカルファッションが生まれた。

こういう個性的な文化はひとつの考え方であり、早い時期に形成される。その魅力に引かれたジャパニーズファッションファンの外人が自身の国でそのファッションをして練り歩く。”日本国内にいる”ということには敵わないけど、身体的にも、メンタル面も自分自身を正当化するひとつの方法なのだろう。

これらのカルチャーなしには日本のストリートスタイルはここまで繁栄しなかったと思う。「着ぐるみん」というジャンルをつくったのもまた、やはりこの国だ。もはや、ここ日本のファッション界で違反者がでるようなことはないでしょう。そして成功をおさめるべく、もっと多くのジャンルとファッションサブカルチャーが増え続けるのでしょう。

ファッション治安の最高に良い日本、まさにCOOLです。

PROFILE

ミーシャ・ジャネット(Misha Janette)

ファッションディレクター/ジャーナリスト/ブロガー
米国ワシントン州生まれ。文化服装学院卒業。イギリス媒体「ビジネス・オブ・ファッション」(BoF) の「世界のファッション業界を動かしている500人」の一人として選出された。

ファッションディレクターとして、アート+最先端ファッションを融合し、極めて想像的な世界を描く事で知名度を上げ、国内外のトップ媒体やアーティストと連携。米アーティストのニッキー・ミナージュのツアー衣装とコーディネートなどを手がけた。ファッション・ジャーナリストとして、国内外の様々な媒体へ記事を寄稿。日本のファッションシーンを世界へ発信しようと、小ファッションブログ『東京ファッションダイアリー』をバイリンガルで開設。世界のトップブロガーとしても大注目を浴びる。テレビ、ラジオ、DJなどの出演でマルチに活躍するクリエイター。