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日本のポップカルチャーの魅力を世界に!

TOKYOOtakuModeInc.

PROLOGUE

Tokyo Otaku Mode Inc.、通称TOM-。その名の通りいわゆる日本の"オタク"文化を世界に広める先駆者として注目を集めている。クールジャパン機構は、2014年9月、このTOMに対し3年間で最大15億円の投資枠を設定し、支援することを決定した。TOMはアニメやマンガなど日本のポップカルチャーの情報をFacebookページ で発信し、それに連動した関連グッズのEC(電子商取引)サイトを運営している。そのユーザーは99%が外国人。彼らをどのように惹きつけ、ビジネスにつなげているのか。創業者たちに話を聞いた。

*掲載されている情報は取材時点(2014年12月)。敬称略。


chapter1 1650万人のファンの心をつかみEコマースを本格化
TOMのFacebookページは2011年の立ち上げ以来ファンを急激に増やし、「いいね!」の数は1,650万にのぼる(2014年12月現在)。Facebookページのファン数では、世界の名だたるECサイトにも引けをとらない驚異的な数字だ。人気の秘密のひとつは、TOMとファンとの双方向なコミュニケーション。実際、TOMのFacebookは日本のポップカルチャーをこよなく愛する外国人たちの生の声が溢れている。
亀井
TOMの最大の特徴は、ユーザーの99%が外国人でFacebookページを通じてダイレクトにコミュニケーションできること。英語がベースだから、当初は外国人が運営しているサイトと思われていたくらいです(笑)
小高
Facebookに記事を投稿すると、すぐにユーザーからの跳ね返りがある。ユーザーからの反応がリアルタイムにダイレクトに届く、今の時代らしい双方向なメディアです。
亀井
TOMでEコマースを始めたのも、TOMのFacebookページにユーザーが「あの商品が欲しい」とコメントしたのがきっかけでした。今では本格的にEコマースにシフトしています。
小高
TOMがEコマースで扱うコンテンツは、「オタク系」、「ジャパン+エンターテインメント」という2つのコンセプトのものを選別しています。
亀井
イメージとしては、買い手の好みを考えながら商品を一つひとつ吟味して並べるセレクトショップに近いのかもしれません。外国人に何が"刺さる"のかを当てるのは難しいけれど、僕たちの選び方やユーザーのリアクションによっては予想もしなかった商品が売れる可能性があります。
小高
例えばTOMのヒット商品のひとつである「アルパカッソ」というアルパカのぬいぐるみは、ユーザーのリクエストで売り始めたものの当初は「売れるのかな…」と不安でした。でもユーザーが自分たちのSNSで紹介した途端に一気に拡散したんです。「寿司ソックス 」は、海外の雑誌やテレビなどのメディアが飛びついて認知が広がりました。
秋山
地域ごとに売れる商品の違いが分かることも面白いですね。欧米の方が、大きな起承転結やバトルアクションのあるコンテンツを好む傾向にあります。一方、「日常系」と言われるような学園ものが、アジアだとキャラクターが好まれて人気が出ることがある。
亀井
Eコマースを一年やってきた感想としては、どの地域でどんな商品が売れるのか、なんとなく分かってきたな、と。セレクトショップって、単に買い手が欲しそうというだけではなくて、さらに一歩先を見て売ってもいいと思うんです。僕たちが世界をマーケティングしてそういうことができるようになりたい。あとは、セレクトショップがオリジナル商品を作っていくように、TOMでしか手に入らない商品を出すことも検討したいと思っています。
TOMが扱う商品の一例

TOMが扱う商品の一例

TOMのFacebookページ

TOMのFacebookページ

「寿司ソックス」

「寿司ソックス」


chapter2設立のきっかけは海外で見た光景
CEOの亀井は、もともと特段“アニメ好き”ということでもなかったと言う。その亀井にTOM設立の転機をもたらしたのは、海外を回り市場の現場を見る習慣にあった。特にアジアを回ったときには、現地で日本のアニメやマンガなどがいかに人気かを目の当たりにした。さらに衝撃を受けたのは、人気が高いほどコピー品など無数の偽物が出回っている光景だった。それが亀井の原体験になっている。
亀井
日本人として「違うだろう」という思いがあった。
秋山
作った人にきちんと利益が還元されるよう、「正規品を流通させたい」というのがTOM設立の動機のひとつです。そもそも海外には日本で作られた正規品を買える場所が少ない。インターネットを利用してきちんと正規品を買える環境を整えれば、本当のファンならそこで買うと思ったんです。
小高
ホビーグッズは嗜好品なので、「似ていればOK!」というものではありません。ファンの本音は「ちゃんと本物が欲しい」。だから本物と保証してあげることが大切。そうしないとリピートにはつながりません。
亀井
僕たちは、期せずしてチャンスに恵まれました。とんとん拍子に資金調達の話がまとまりアメリカで会社を設立することになったり、クールジャパンに関してもファンドが設立されたり。本当にミラクルスタートアップに近い。でも振り返れば、正規の日本のコンテンツを海外に売り出すというのは、誰からも共感を得られるビジネスだったのだと思います。
秋山
今一緒に働いているスタッフには日本人も外国人もいますが、TOMに共感して集まってくれた人がほとんど。これは僕らが扱っているコンテンツの力の恩恵ですね。昔から日本のコンテンツに直に接してきた純粋なファンばかり。他のビジネスだったら、こうはいかなかったでしょう。
亀井
僕にとっては秋山や小高のように、僕にできないところを補ってくれる仲間に恵まれたのも本当にラッキーだった。起業はたまたま声をかけ合って集まったメンバーが起こした奇跡。だからTOMのビジネスは再現性が難しいと思う(笑)
仲間と大連を視察に訪れた亀井CEO (中)

仲間と大連を視察に訪れた
亀井CEO (中)

TOMの正規品ポリシー

TOMの正規品ポリシー


ミラクルスタートアップ、そう言いながらも世界の実態を見て危機感を覚え、それを自分たちのアイデアで変革しようとする彼らからは起業家精神と強い信念が垣間見られる。その思考には国内・海外という枠はなく、ターゲットは世界だ。これから先のTOMをどのように見据えているのか。最後に今後のビジネスについて想いを語ってもらった。
小高
今後の展開として大きなものに「多言語化」があります。現行のサービスは、英語かつドル建て決済のみですが、これを中国語、インドネシア語、スペイン語に広げ、現地に沿った決済方法も可能にし、英語圏以外にも広げていきたい。他にも、ユーザー同士つまりCtoCでグッズを売買するマーケットを作れないかとか、オタク系ゲームの制作や、アニメやマンガの配信など色々な構想があります。それらを2020年に向けてブラッシュアップしてより大掛かりな勝負をしたいと思っています。
亀井
Eコマースは、あくまでベースという位置づけ。これが黒字転換できれば、何にでもチャレンジできるようになる。ブランド力はユーザーの信用度の高さで成り立つと思う。TOMのブランド力をさらに強化して、皆に夢を見させてあげられるような、世界で戦える会社にしていきたいですね。
秋山
ものを買うときにはなんとなくAmazonに行く、ニュースはなんとなくYahoo!ニュースを見る。TOMもそういう風になっていければいいと思う。面白いガジェットやアニメグッズが欲しければ、なんとなくTOMのページに行く。TOMで買って、TOMの箱で届くということが一つのステイタスになるようなユーザー心理まで持っていけるといいですね。
東京オフィス入り口に掲げられたロゴ

東京オフィス入り口に掲げられたロゴ

PROFILE

CEO Co-Founder

亀井 智英

亀井 智英Tomohide Kamei

2002年サイバー・コミュニケーションズ入社。NTTアド、デジタルガレージ、電通などに出向し、メディアの立ち上げや広告展開などを担当。2012年4月にTokyo Otaku Mode Inc.を米国デラウェア州にて創業。

CFO Co-Founder

小高 奈皇光

小高 奈皇光Naomitsu Kotaka

2000年、メリルリンチ投資銀行部に入社後、多数のファイナンス及びM&Aに携わる。その後ガイアックスの執行役CFO・管理本部長に就任。2012年にTOM共同創業者として、米国500startupsのプログラムに参加。

Corporate Officer Co-Founder

秋山 卓哉

秋山 卓哉Takuya Akiyama

大学卒業後、ソニーに入社。多様な広報業務に就く。2012年4月にTokyo Otaku Modeの創業に参加。現在は広報業務に加え、人事総務等のバックオフィスの責任者を務めている。

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